Emaインタビュー「靴を脱ぎたくなるような気分にさせてあげたい」 Interview: Ema Jazz singer
幸せな日常に欠かせないのが、1杯のコーヒーと共に聴くお気に入りの音楽。素敵な人たちにお会いするインタビュー第3回目は、ジャズシンガーのEmaさんです。
アルバム「Respirar(レスピラール)」で2016年にCDデビューを果たし、「ブルーノート・ジャズ・フェスティバル」などにも参加する話題の若手実力派ジャズシンガーEma。彼女のおおらかで、深く優しく包み込むようなヴォイスは、聴くものの肩の力をふと緩め、心をオープンにさせてくれます。
キューバの名サックス奏者、セサル・ロペスや、音楽通として知られるキャスターの小倉智昭氏も絶賛するEmaの魅力はどこから来るのでしょう。間もなく川越コーヒーフェスティバルでライブを行うEmaさんにインタビューしました。
—歌手になったきっかけは?
もともとミュージカル出身なんです。母親に自分から「やりたい!」と言って、8歳の時にオーディションを受けて、9歳の時、劇団四季のミュージカル「ライオンキング」のヤングナラ役でデビューしました。初めて観た映画がアニメのライオンキングだったし、作品自体も子供の頃から大好きだったんですよ。
—ライオンキング!劇団四季の団員だったのですか?
団員だった時期もあります。ダンスが大好きで、むしろ歌は苦手意識があったくらい。20歳直前まではミュージカルのダンサーをしたり、ドラマで女優をしたりしていました。
でも、完璧に磨き上げたものじゃないと人前で見せられないという意識でやってきたことや、同世代の凄い才能の人たちと競っていくことに疲れてしまって。その環境がずっと自分にはフィットしないとは思っていたんですけどね。もう少しお客さんとの息遣いがわかるところでやりたいって思うようになって、大きな舞台は「ピーターパン」のタイガーリリー役を最後にしました。
—ジャズと出会った時のことは憶えていますか?
祖父も父もジャズ好きでいつも家で流れていたので、ジャズは生まれる前から聴いていますね。憶えているのは、20歳の誕生日に両親をブルーノートに招待して、綾戸智恵さんのライブを観た時のことです。「日本人でもブルーノートでこんなカッコいいことするんだ」って身近に感じて感動しました。
それと同時期に、大ファンだったビヨンセに刺激されたことも大きいです。歌もダンスも素晴らしい彼女を見るたびに、ダンサーは踊ることだけが仕事だと壁を作っていた自分が、少しずつ歌に目覚めていきました。ビヨンセからはかなり影響を受けてます。
—ジャズはいいですか?
今のところジャズが心地いいです。自由になれる感じがいいですね。技術より想いを大事にするというか、技術を追求するところから逃げたら足枷が外れて、すごく解放されて自分らしくなれました。息がしやすくなったっていうか。なぜか歌うとすぐに人と仲良くなれるんですよ。
—Emaさんの歌を聴くと、なんだか話しかけたくなるんですよ。
ボーカルってみんなが持っている楽器だから仲良くなりやすいんでしょうね。心を開くスピードというか、歌の力ってほんとう凄いなって思いますね。歌はどの人にとっても身近にあるものなんだなって、ライブするたびに感じています。
—歌手としてのキャリアの中で、一番の転機はいつですか?
ここ最近ですね。小倉智昭さんにデモテープを送ったら、ライブに来てくれたことが一番の転機だと思います。来てくださった時は「夢かな」って思いましたね。
—小倉さんはライブに来てなんておっしゃったんですか?
それが、緊張しすぎてあまり覚えていないんですよ。すごくずっしりとした口調で「僕でよければプロデュースするから」みたいな言い方だった気がします。本当にびっくりしました。小倉さんは、クラシックもジャズも詳しくてご自身も演奏されるし、音楽に深い造詣がある方なので、話をしてて凄く楽しいんです。ここ数年は周りに動かされてるというか、いろんな人に助けられてる気がしています。
—Emaさんが歌を通して得たものは何ですか?
短所もその人の魅力なんだなって。私は声が低いししゃがれてるので、子供の頃から可愛い声に憧れていましたが、ジャズで自分の嫌な声を思い切って出してみたら意外とそっちの方が良かった。苦手意識があったことを周りが褒めてくれて、短所は長所だということに気付けたのはよかったです。
—深いこと言いますね。結構しんどい時期があったのですね。
昔はコンプレックスの塊だったんですよ。10代まではずっと歯を食いしばって、 似合わない服を着て頑張っていましたね。ここ最近はすごく楽しい。歌うことと、食べることと、寝ることくらいしかしてない。歌う時なんて何も考えてないです。もうちょっと考えた方がいいかな(笑)。
—今、その時の自分や、同じような状況にいる人たちにアドバイス送るならなんと言います?
固執しないこと。「絶対できない」とか「私には無理」とか決めつけないで、そう思っているものからまずやってみるのもいいかもしれない。「きっと大丈夫」って言いたいですね。
—Emaさんの夢は?
自分らしいライブをするのが夢です。ミュージカルが大好きだから、いつかは踊って歌ってちょっとストーリー性のあるノンジャンルな面白いライブがしたいって思っています。
それと、いつかブルーノートに出たいですね。
—コーヒーと一緒に聴く音楽でオススメは?
Jose James(ホセ・ジェイムズ)が大好き。デビューアルバムの「The Dreamer」が好きで、特にコーヒーとなら「Love」がいいなと思います。濃いめのコーヒーと合わせてよく聞いてますね。
—Emaさんにとって「美しい」ものって何ですか?
うーん、何だろう・・・。いっぱいあるな。うまく説明できないし凄く抽象的なんですけど、遠出して湖の前に座って、ただ何もないところに居る時、美しいなっていつも思ってます。
美しいっていう気持ちは自分の中に沸き起こってくるから、特に何を見たってことじゃないんですけど、時間、光、朝日、太陽、、、、もしかしたら光で美しいと思ってるのかもしれない。木漏れ日なのかなぁ。それに、風とか、鳥の声とか、耳で聞こえてくるものに感じることも大きいかもしれないですね。
—素敵です!最後に川越コーヒーフェスティバルに来る皆さんに一言お願いします。
靴を脱ぎたくなるような気分にさせてあげたいなって思ってます。リラックスして聞いて欲しいな。靴を脱いでるような感覚で、お寺で裸足でコーヒーフェス(笑)。
帽子でもネクタイでもいいし、身につけてる何かを外したくなるような、部屋に入った感じ。もちろん、脱がないで履いててくださいよ(笑)。それに気持ちよくて寝ちゃっても嬉しい。さすがにイビキはちょっと困りますけど(笑)。
Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka
プロフィール
Ema
1990年9月8日生まれ。乙女座 B型。幼少期からミュージカルやドラマなどに出演し、様々なジャンルの音楽と出会うと同時に表現する事の喜びや大切さを知る。
2011年以降、表現者としての可能性を模索するために、演劇から歌の世界に表現の場を移し活動している若手実力派JAZZシンガー。
アルバム「Respirar(レスピラール)」で2016年にCDデビューし、同年のBlue Note Jazz Festivalにも出演。
現在は、六本木、銀座などのJAZZクラブにて精力的に活動中。
特技:ジャズダンス、コンテンポラリーダンス、タップ、ヒップホップ、バレエ、六調舞、殺陣
趣味:カメラ、お散歩、トランペット
好きなもの:動物、植物、海、夕闇、天体、秋
【ライブ情報 ※2018年11月3日更新】
第3回川越コーヒーフェスティバル Emaライブ 住所:川越・蓮馨寺 埼玉県川越市連雀町7-1アクセス: 川越市駅より徒歩10分・本川越駅より徒歩5分
開催時間:12月1日(土)2日(日)10:00-16:30
演奏時間:1st 13:00 / 2nd 15:10 Ema出演は2日のみ
https://www.kawagoecoffee.com/
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