• Retty
  • homeHOME /
  • WHO LOVE COFFEE /
  • Dear All 峰村命インタビュー「丸くて甘くてフレーバーもあって、苦さが残らないエスプレッソが理想」 Interview with Mei Minemura, co-founder of Dear All, Tokyo, Japan

Dear All 峰村命インタビュー「丸くて甘くてフレーバーもあって、苦さが残らないエスプレッソが理想」 Interview with Mei Minemura, co-founder of Dear All, Tokyo, Japan

東京・笹塚駅から徒歩5分の場所に、北欧の豆を使ったコーヒーが飲める素敵なコーヒーショップがあるのをご存知でしょうか。そのお店の名前は「Dear All(ディアオール)」。東京・新宿で生まれ育ち、中学からの同級生だった星祐太郎さんと峰村命さんが共同経営しています。

 

この度、「café Patricia(カフェパトリシア)」をオープンするにあたって、エスプレッソを美味しく出すために、どなたかにコーチをお願いしようと考え、まっさきに浮かんだのが、このお二人のお店でした。

Dear Allは、今まで国内外の多くの有名ロースターの豆を取り扱い、それぞれの特徴を生かした素晴らしい一杯を提供し続けています。特に彼らのシグネチャードリンクであるカプチーノは、口に含んだときの質感が心地良く、甘さがあって、ミルクとのバランスも素晴らしく、多くのファンがいるメニューです。

 

 

入り口のガラス戸から自然光が差し込むDear Allの明るい店内で、カップ片手に楽しそうに会話するお客さん達の様子を眺めていると、まるで海外のコーヒーショップにいるかのような気持ちに。そこで、この心地よい空間を提供している共同経営者でバリスタの峰村命さんに、お二人の今までのことや、これまでたどったコーヒーのこと、これから先のことなどを伺いました。

 

—お二人が、このお店を一緒にやることになったいきさつは?

実は、僕たちはお互い13歳から知ってるんです。学生時代から、休みの時はいつも一緒に買い物行くくらい仲が良かったし、19歳からは一緒にショッピングサイトを作ったりして、何か一緒にビジネスしたい気持ちがあったんです。その後、星は大学に行き、僕は留学したのでしばらく離れてましたけど、また意気投合しました。星は、人の生活に寄り添った事業をやりたいってずっと言っていたので、2015年の末、すでにバリスタとして働いていた僕が、「その事業に僕のコーヒーの能力使ってみない?」って提案して、2016年初頭から準備をはじめて、 6月にDear Allがオープンしました。紆余曲折ありながらも続けてきて、まもなく5周年です。

 

 

—5周年おめでとうございます!峰村さんがコーヒーの世界に入ったきっかけは?

もともと大手のカフェ、レストラン会社で働いていましたが、そのお店はコーヒーにフォーカスしているわけではありませんでした。そのあと、家族の事情で僕が精神的にまいってしまい、仕事にいけなくなった時期があったんです。それでずっと家に引きこもっていたんですけど、ある日、友人が「どっか行かない?」って、僕のことを連れ出してくれて。それで、自然がたくさんあるところがいいと思って軽井沢に行きました。ようやく到着した頃に、どこかで休憩しようと検索したら、近くに丸山珈琲があることがわかったんです。

 

—丸山珈琲本店ですか?

はい。 ガラガラって引き戸を開けて入って、スリッパ履いて入っていくと、暖炉で火が焚かれている部屋がありました。そこで、創業した1991年が名前になっているブレンドを飲んだんですけど、一口飲んだ瞬間に全てが開眼したんですよ。なんだか、コーヒーにすごい感謝が生まれて。当時まだ丸山さんのことも知らなかったんですが、すぐにスペシャルティコーヒーを調べて、家でも淹れたくなって、翌日に東急ハンズに行ってハンドドリップの器具を一式買いました。それで、今度はコーヒー専門店で働いてみようと思ったんです。

 

—そこからどのようにコーヒーのキャリアを?

コーヒーやエスプレッソにはすでに触れていましたが、出勤前によく通っていたパドラーズコーヒーが、参宮橋から今の場所へ移転する際、半年ほど手伝ったことがあり、そこでさらにコーヒーに専門的になっていきました。その後、フリーでイベントしたりしていくうちに、どんどんバリスタになりたい気持ちが大きくなって。本格的になったのは、Saturdays Surf NYC(サタデーズサーフ 、現サタデーズニューヨーク)に行ってからです。サタデーズには最初、お客として通っていたんですけど、僕が美味しいと思える甘くて苦くないラテを出していたんです。当時のサタデーズには、石谷貴之さんとネム(Nem Coffee & Espresso)の渡邊拓実さんがいましたね。

 

—そこでバリスタチャンピオンの石谷さんと出会ったのですね。

あとから石谷さんがコーヒー業界ではすごい人だってことを知るんですけど、エスプレッソの屈指のバリスタに習えるならと思って、それから2年くらいサタデーズで働いて、石谷さんからはいろんなことを教えてもらいました。エスプレッソのベースとなる技術や所作を徹底的に叩き込まれましたね。サタデーズでは、全国に店舗展開していくときに、バリスタのトレーニングなどを担当しながら、お店の立ち上げにも関わることができました。

 

—今のDear Allのコーヒーの美味しさは、それまでにさまざまなお店で鍛えたことがベースになっているのですね。

そうですね。教わったこともあるけど、結局は自分の信じる美味しさを突き進んできました。独立してからは、自分の味作りをさらに極めたくて、ブラッシュアップを常に続けています。今の味に満足せずに、毎回発見があればそれを吸収し、もっと成長を続けられると思って、全メニューのレシピ作りをしています。

 

—お店をオープンしてから気付いたことはありますか?

やはり、地域密着じゃないと続かないです。チェーン店が満員なのに、うちらの店はガラガラだなって嘆いたこともあったけど、日々丁寧に一杯一杯作って、 暇な時ほどより丁寧にお客さんに接客をすることを心がけていたら、自然とお客さんが増えていきました。数年前から海外のロースターを扱っていますけど、コロナ禍でも豆を買いに来てくださいますね。良いものを扱い、納得のいく焙煎具合の豆であることは譲れないので、主に浅煎りを扱っていますが、この街でスペシャルティコーヒーの素晴らしさを伝えることはできているかなって思っています。

 

—今は、北欧のコーヒーを扱っていますね。

今は、Prolog Coffee Bar(プロローグコーヒーバー)とCoffee Colletive(コーヒーコレクティブ)という、デンマークのコペンハーゲンにあるロースターの豆を扱っています。プロローグは最初、お客さんが北欧土産で買ってきてくれたのを飲んだときに美味しくて感動したことがきっかけです。その後、コペンハーゲンにも行きました。コレクティブは大きな会社だし有名ロースタリーなので、普通に素晴らしいところでしたし、プロローグはまだ1店舗しかないっていう規模感もうちと似てて、スタッフ誰が入れても毎回コーヒーが美味しくて。すでにお客さんがクロワッサン食べてカプチーノ飲むっていうスタイルが出来上がっていたんです。

 

—デンマークのコーヒー文化はどう感じましたか?

同じ人が1日3回くらいコーヒーショップに来ますね。単にコーヒーが好きなのか、お店に寄ることが好きなのか、出勤前にコーヒーを通して人と会ったり、ひとりで来てテイクアウトしたり、早めに来てゆっくり過ごしたり、それぞれが楽しんでます。みんなどんどん豆買ってくし、コーヒーが好きですよね。フィーカっていう言葉があるように、コーヒーを飲む時間を大事にしています。日本だとまだ朝7時から満席のコーヒー専門店なんてないですからね。

 

—峰村さんがコーヒーを出すうえで大切にしていることは?

バランスが大事。それから、砂糖とミルクなしで飲めたら最強だなって思ってます。理想は甘くて苦くないコーヒー。それを表現できるのは浅煎りかなって思ってますし、僕らが扱うコーヒーではそれを実現できるんです。コーヒーの苦手意識がある人も美味しく飲めるコーヒーなんじゃないかなって思っています。

それから、カプチーノが好きなので、カプチーノの最終出来上がりにもフォーカスしています。丸くて甘くてフレーバーもあって、質感も苦さがのこらないようなエスプレッソを理想としていますね。エスプレッソとミルクの両方が美味しくないと、美味しいカプチーノは出来上がらないんです。

 

—コーヒを通して実現したいことは?

自由になんでもできる環境ですが、店舗展開とかは興味ないので、シンプルにもっと自分のコーヒーを知ってもらいたいです。有名なバリスタさんはいっぱいいると思うんですけど、ここにも美味しいコーヒーあるんだぞって言いたいです。トレーニングやセミナーで教えるのも好きですし、イベントで実際に作ることもあるので、あらゆるところで僕らのコーヒーを飲んで欲しいですね。

—最後に、峰村さんにとって、美しいとはなんですか?

昨日、山梨に行く途中、ずっと続く緑の木々や、晴れた空がとても綺麗で、電車の窓から見えた自然の美しさに感動していました。僕は競技会にも挑戦しているし、メンタルが弱いところがあるので、日々コーヒーに向き合っていると、精神的なものに左右されることがあるんです。でも、ふと仕事を離れたときに、空や緑などに触れると、自然の美しさに浄化されて、また次の日頑張ろうってなるんですよ。 軽井沢の丸山珈琲本店の暖炉で火が焚かれている部屋で、窓の外の雪景色を眺めながら、「本当に美しいな」って思って飲んだ一杯のコーヒーのおかげで今の僕があるように、やっぱり美しさとは自然なのかなって思います。

*****

毎日出すお店のコーヒーをより美味しくするために、日々努力を惜しまない峰村さんの誠実さが伝わってきました。Dear Allで食べられる焼き菓子などのスイーツもおすすめです。新宿方面に行かれる際は、ぜひDear Allで美味しくて優しい時間をお過ごしください。

 

 

撮影:田中淳子 Atsuko Tanaka

取材:高綱草子 Kaya Takatsuna

プロフィール

 峰村命 Mei MINEMURA

友人との旅行中に軽井沢で飲んだ1杯のコーヒーに感動して、本格的にコーヒーの道へ
Paddlers Coffee、Saturdays NYCを経て、2016年6月、中学時代からの同級生だった星祐太郎と一緒に東京・笹塚にDear Allを創業。
地元密着のお店として愛され、コーヒー好きも足繁く通う人気店に。2021年6月末に5周年を迎える。
趣味は、コーヒー、自転車、仕事、旅行

【店舗情報】

Dear All(ディアオール) 住所:〒151-0073 東京都渋谷区笹塚1丁目59−5
営業時間:8:30 - 18:00(コロナ禍で変更の可能性あり)
定休日:月曜日



WHO LOVE COFFEE BACK NUMBER

NEW ARTICLE

Page TopPage Top