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沖縄から生まれた世界トップレベルのコーヒー焙煎士、仲村良行インタビュー。後編「もうクオリティや美味しさだけを追求する時代じゃない。今考えるべきは、100年後のコーヒーのこと」Interview: Yoshiyuki NAKAMURA vol.2, Mame polepole
沖縄から日本代表として世界大会へ出場し、2019年1月にイタリアで行われた「World Coffee Roasting Championship(ワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ) 2018」に於いて準優勝に輝いた、コーヒー焙煎士の仲村良行さんインタビュー後編です。
前編は、幼い頃の出来事から、焙煎に出会って勉強を始めた頃までを中心にお聞きしましたが、後編は、昨年の活躍を振り返っていただきながら、「アメイジングコーヒー」というグループ活動のことや、今コーヒーの世界に感じていることや気になること、これから焙煎士を目指す人へのアドバイス、そして仲村さんにとっての「美しい」とは?を伺いました。
—川越コーヒーフェスティバルに来ていただきありがとうございました!ポレポレさんのブースはとても大人気でしたが、コーヒーフェス、そして川越はいかがでしたでしょうか?
コーヒーフェスはお寺で開催されていて、朝来るとピーンとはった空気感に凛とした雰囲気で、高まる気持ちも穏やかになるような不思議な感じでした。イベントが始まる前からお客様が並んでいて、まだかな?まだかな?とワクワクしたような空気感に変わり、ライブも行われ、皆んな思い思いにコーヒーや音楽、その雰囲気をそれぞれが楽しんでいて素敵だなぁと思いました。
川越は昔ながらの街並みも残っていて、僕たちから見るととても新鮮で、コーヒーもコーヒーの品質だけでなくコーヒーとコーヒーを淹れてくれる人とのコミュニケーションもお客様が楽しんでいるのが素晴らしいなと思いました!
—年末年始はどのように過ごされたのですか?
—(笑)。昨年は、何度か台湾に行かれていましたね。
沖縄から台湾に行くのって、実は東京に行くよりも近いんです。昨年11月は、焙煎のセミナー合宿に3日間と、焙煎の世界大会「ワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ」に出場した井田さんの応援に行きました。合宿では、台湾人の生徒さんと長い時間お話できて面白かったですね。台湾には、理論的なコーヒーの情報がたくさん溢れているので、ちょっと話をするだけで色々なことが一つに繋がって、みんながすぐ理解できるようになるのが凄かったです。
—「ROKUMEI COFFEE CO.」の井田浩司さんとは、以前から面識があったのですか?
井田さんは、「LANDMADE」のオーナーの上野さんと一緒に、 「アメイジングコーヒー」という焙煎を勉強するグループを作った仲間なんですよ。何年も一緒に勉強しているので理論も考え方も似ていて、大会前から世界大会のことも色々やりとりしていました。来年世界大会出場が決まっている 「KOTO COFFEE ROASTERS」の阪田さんもそうだし、僕らのグループから何人も日本代表が出ているんです。
—そんな焙煎のエリートグループが存在するんですね。
2015年に「いつか珈琲屋」の加藤さんが、僕らのグループで初めて国内大会の決勝に上がった時は、「すごい!自分達の勉強会からファイナリストが出たよ!」って盛り上がって、翌年優勝した近藤啓さんが世界大会の準備してる間に、今度は僕が日本チャンピオンになって。
—すごい連鎖ですね
だから、井田さんが当然優勝するものだと大会前から確信していたんです。これまでの数年間の連鎖を振り返ったら、ようやくみんなの努力が報われ、ついに世界チャンピオンが誕生するって想像したら、感極まって泣けてきました。でも結局、優勝には届きませんでした。ちょっと読み違いはあったと思いますが、現実に直面して改めて、「世界大会は分厚いな」って思いましたね。今は、「じゃあどうやったら次勝てる?」っていう思考にもうみんなシフトしていますけど。
—世界で勝つって大変なのですね。ところで仲村さんは、コーヒー業界ではご自身がどういう役割を担っていると思いますか?世界で準優勝になったのはなぜか、考えたことはありますか?
特別なギフトがなくても、凡人でも、情報がない沖縄の田舎でも、競技会で世界に通用するようなパフォーマンスができる。場所は関係ないよ、ってことですかね。 例えば、元ボクサーの具志堅用高さんも世界チャンピオンを何回も防衛しましたけど、当時はアメリカ人に勝つなんて、誰も思いもしなかった。こんな田舎でも世界に通用することを彼が証明してくれて、みんな勇気をもらったと思うんですよ。だから、僕も具志堅さんのように、やればできることを伝えて、みんなを元気にできる存在かなとは思います。
—素晴らしいです。では、今のコーヒーの世界に感じる不安や不満はありますか?
技術的なものやクオリティは、自然の流れでいずれ解決されると思います。だから、もうそこは考えるところじゃない。今大事になってきてるのは、「100年後、本当にコーヒー栽培できてる?」とか、「そもそも平和ですか?」ってところです。僕たちの子供や、その子供の子供がコーヒー飲めてるのかなって。環境破壊は本当に考えなきゃいけないところだし、持続可能にするためには、もちろん経済的なこともそうだけど、戦争があったらコーヒーどころじゃないから、まず平和でなければならないし。とにかく環境破壊がこれ以上進むとまずい。それが不安材料ですよね。
—今後は重要なテーマですね。今は、クオリティや希少価値の豆を手に入れることに躍起になってるところがありますけど、それは本質とは違いますね。
もう時代はそこじゃないと思うんですよ。そこに目を向けてるうちは、まだ目先のことしか見えてないんじゃないかなって思うんです。それに、正直良いものはやっぱり少ないので、市場は原料の取り合いになっていて、良い豆が手に入るところは限られているという現状もあります。結局は個々の意識が大切ですけど、その先にある「コーヒーために何ができるんだろう」っていうところを考えるほうが本質だと思います。
—そのためには、どういう方向にシフトしていけば良いと思います?
コーヒーの良い悪しを決めているのは人間ですよね。でも植物は植物として精一杯生きてる。僕たちは豆の持っているポテンシャルを伝えるところをしっかりやるしかないです。でもだからといって、クオリティだけでここのコーヒー美味しかった、美味しくなかった、って判断して終わるのもなんだか寂しいじゃないですか。
「いろんな品種があって、何千というファーマーがいて、自然環境が色々違っていいじゃない。その違いを楽しもうよ」っていう風になってほしい。コーヒーは、単にリラックスして飲む時間を楽しんでもらうことがとても大切だと思います。こんな忙しい時代だからこそ、コーヒーは豊かな時間を提供していると思うんです。
—では、今コーヒーに関して気になることを教えてください。
コーヒーについては、いつでもなんでも気になりすぎますね。 焙煎も抽出もそうですけど、「そもそもなんでそういう状態で育てられたの?」とか、「なぜそういう乾燥、発酵をしたの?」とか、じゃあ「価格的に見てどう?」とか、「どういう反応が起こったの?」とかいつも考えています。でも最近は、自分の中でも研究者の中でも、ちょっとずつ今までの疑問が整理されている傾向にあって、もうひと超えで何か見えそうだなっていう感覚があります。
—ではコーヒー以外のことで気になることは?
子供のことが一番気になりますね。僕は男の子3人と女の子ひとり、小学4年生、3年生、1年生、保育園の年長さんの 4人の子供がいるんです。やっぱりもっと家族との時間を増やしたいですね。それに子供たちを見てると未来の環境に目がいくし、彼らが困らないようにちゃんとしないとって思います。
—お子さんは、パパみたいにコーヒーやりたいって言いませんか?
言われます。自分が困っているから、言われるたびに「英語できないとダメだね」って言い返します。別にコーヒーじゃなくても良いので、何か興味を持って没頭してもらうにはどうしてらいいかをいつも考えてますね。
—これから焙煎士を目指す人達にアドバイスお願いします。
何を目指すかによりますけど、自分が目指してるところで活躍している人に話聞くのが一番の近道だと思います。修行に行くのもいいけど、セミナー受けて一気に情報もらってトライ&エラーやった方が時短になるし、早いと思う。僕たちの時代はそういう機会がなかったから凄く時間がかかったんですけど、今だったらある程度のものが見えてる人達がいるので、そこから習うのが間違いないと思います。後は、見落とされがちなんですけど、技術的なことよりも、経営や接客が大切です。
—経営と接客ですか。
一番大切なのは接客だと思います。最後は人と人。やっぱり縁を作るのは人と人じゃないですか。多分アドバイスはそこしかないし、僕にないものを持ってる人たちから、僕も学ばなきゃいけないと思っています。
—それでは、仲村さんにとって、「美しい」とはなんですか?
やっぱり自然じゃないですか。自然の産物はすべて美しいと思う。自然は黄金比。みんなが感動するものはすべて黄金比だってダヴィンチコードでも言ってましたし(笑)、 スポーツでもなんでも、黄金比が働いてる。 柔道でも空手でも、重力、遠心力やテコの原理など自然をいかに利用しているかだし、もちろん焙煎も、メイラード反応、火、火に伝わる物理、原理、原則など、いかに感謝して自然を利用するかだと思う。美しいって多分そこです。
—まだ叶っていない夢はありますか?
そうですね。世界チャンピオンになりたかったけど、なれなかった。今、気持ちが宙ぶらりんになっています。覚悟を決めて挑戦するのか、育てる側に徹底するのか、、、。色々道はあるんだろうけど、ずっと突っ走ってきたぶん、一回止まらないといけない気もしています。だって、この焙煎所とセミナールームだって、オープンするって言って借りて、2年間そのままで、まだオープンしてないんですよ(笑)。
—それでもきっとまた、世界を目指しちゃう気がします(笑)。
そしたら、ここまたしばらく開かないですよ。「ちょっと自分自身のこと立ち止まって考えたほうがいいんじゃないの?」って自分に言い聞かせてます(笑)。
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コーヒーの世界に身を置くプロフェッショナルとして、頑張っている仲間を手放しで応援し、広い視野で100年後のコーヒーのことを考えている仲村さん。味やクオリティに固執せず、コーヒーを飲む時間や環境問題など、その先の本質や課題に思いを巡らせ、おおらかな視点で日々コーヒーのことを考えている様子を感じることができました。
仲村さんが店主の「豆ポレポレ」があるのは沖縄県沖縄市。今のところオンラインショップがないので、店頭での購入のみとなります。沖縄に行った際は、忘れずにご購入ください。都内などでポレポレさんが出店される時は、こちらでもお知らせしたいと思います。お楽しみに!
インタビュー& 撮影:高綱草子 Kaya Takatsuna
プロフィール
仲村良行 Yoshiyuki NAKAMURA
沖縄県沖縄市出身。「豆ポレポレ」のオーナーであり焙煎士。
大学時代にハマったビリヤードでアジア各国を周った際に飲んだベトナムコーヒーがきっかけでコーヒーに興味を持つ。
独学を経て、2010年12月22日に「豆ポレポレ」をオープン。国際資格Qグレーダーを取得して、さらに焙煎技術を深める。
2017年ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップで優勝し、日本代表として2019年1月にイタリア・リミニで行われた「ワールド コーヒー ロースティング チャンピオンシップ2018」(WCRC)に出場。準優勝に輝いた。
【店舗情報 】
豆ポレポレ 住所:904-2171 沖縄県沖縄市高原6-13-8 1Fhttps://www.mamepolepole.com/
営業時間:13:00-19:00
定休日:木曜・日曜
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