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焙煎士特集 vol.4 石井康雄インタビュー「全部自分で納得してやりたいから、先生はいない。地域密着と非日常が両立するブランドが理想の形」Interview: roaster & owner of LEAVES COFFEE ROASTERS

焙煎士特集インタビューのラストを飾るのは、東京・蔵前にコーヒースタンドとロースタリーを構える「Leaves Coffee Roasters(リーブスコーヒーロースターズ)」の石井康雄さんです。週3日しかオープンしないロースタリーは、常にリーブスのコーヒーを求めて多くの人で賑わいます。

葉は枯れ、再び新芽が出るのを繰り返し、木の幹は年輪を重ねていくように、常に新しいことにチャレンジしながら、古きを温め、幹を太くしてきたいとの想いで名付けられた店名。店内の棚には、デイリーコーヒーと並んで、どこにもないような珍しい品種や製法を施した、希少なスペシャルティコーヒーがラインナップ。その反対側には、世界で一台しかない、カスタマイズしたオールドプロバットの焙煎機が置かれています。

さて、石井さんは、これまでどのような人生を歩み、なぜコーヒーの世界に辿り着いたのでしょうか。

 

—幼い頃はどのような子供でしたか?

漫画に書いたような、みんなを束ねるガキ大将でした。親は基本厳しい親でしたけど、やりたいことに関してはなにも言わなかった。今思えば、もっとレールを引いてもらったほうがよかったかな、小さい頃から夢追い人でした。

 

—小さい頃になりたかったものは?

漠然とプロスポーツ選手になりたかった。それで女の子にモテそうなものは一通りやってきたんですけど(笑)、結局自分には格闘技が向いていました。生まれ育った清澄白河は、今のように治安が良い街ではなかったので、自分が強くならなきゃいなくちゃいけないといつも思っていました。

 

 

—それでボクシングを?

はじめたのは中学3年。毎日ボクシングやって、高校2年の時にプロになって、後楽園ホールでデビュー戦をしました。

 

—高校生でプロなんて凄いですね。ボクサー生活はいかがでしたか?

きつかったですね、試合も減量も。僕は短期集中型なので、試合前の減量は1週間で17キロ落としてました。でも、19歳の時に試合中、粉砕骨折しちゃって引退しました。10代だったし、これからもっと上にいって、いつか世界チャンピオンになろうっていう目標があったので、突然明日からのことが何も見えなくなっちゃって。僕の描いていた人生は一旦そこで終了しました。

 

 

—10代でそんな挫折を味わったのですか。

しかも、同時に子供ができたんですよ。それでお金も必要になって、 それから暫くは生活費を稼ぐことに集中しました。大企業の子会社の営業や建築業、それから飲食業、、、となんでもやりました。上の子はもう少しで成人です。父親を見て育ったせいか、安定した会社に入りたいって言ってます。

 

—そんな大きなお子さんの父親でもあるのですね。コーヒーと出会ったのは、それから暫く経ってからですか?

深煎りはずっと飲んでましたけど、コーヒーに強く興味を持ったのは、友人からお土産でいただいたコーヒーを飲んだ時、ストロベリーみたいなフレーバーがして驚いたことがきっかけです。今思えばエチオピアのナチュラルだったんですけど。それが2010年頃で、それをきっかけにいろいろ飲むようになって、自分で美味しいコーヒーを探すようになって、そしたら自分で淹れるようになって、淹れるのが上手くなったら今度は誰かに飲ませたくなって。

 

 

—どこかでコーヒーの勉強はしたんですか?

いや、ボクシングもそうだし、自分が本当に好きなことは、先生をつけたくなかったんですよ。先生が「Aが答えだ」って言ったら、自分は「Bだ」と思ってもAをやらなきゃいけなくなるじゃないですか。もちろん参考にする方はたくさんいますけど、あくまで参考。一切習ってないし、習いたくなかったし、全部自分で納得してやりたかったんですよ。だから、どこにも所属したことがないです。その代わり、教わってしまえばきっと1年で辿り着くところを、5年かかったりしていることもあると思います。

 

—リーブスの前は、何をしていたんですか?

実は飲食業界にはずっといたんです。2010年に人形町にスペインバルをオープンしています。それから2店舗目を門前仲町に出して、1年半ずつ新店をオープンしていって、フレンチ、アメリカンダイナー、、、ようやく5店舗目からコーヒー専門店にフォーカスすることができました。

 

—そんなにたくさん飲食店を経営者されてきたのですね。では飲食店をすべて含めたら、ここは石井さんにとって何店舗目なんですか?

7店舗目です。スタンド(蔵前にあるリーブスのコーヒースタンド)が6店舗目。でも、ちょうどコロナがあっていろいろ整理したので、今自分が経営してるのは、リーブスコーヒーブランドだけです。

 

—そうですか。でもやはり、前々から食には精通しているのですね。

昔から嗅覚と味覚はすごく敏感でしたね。でも実はジャンクフード大好きで、ラーメン、ピザ、、、などなにかしら毎日食べる生活を35年間続けてました。それで、その生活にちょっと限界を感じてきて、2年前くらいからグルテンフリーに変えて小麦を一切絶ったら、体質も変わり、嗅覚と味覚が抜群に良くなって、次のステージに行きました。

グルテンフリーにすると腸内環境が整って脳にもいい効果をもたらすみたいです。以前は、小さいことですごく悩んでましたけど、今はなんとかなるだろうっていう考え方に変わりました。

 

 

—お店を蔵前にオープンしたのはなぜですか?

地元だし、川が好きなので、川が近くに流れている場所に出したかったんです。今あるコーヒースタンドのそばで、焙煎の環境が整うところを探していました。

 

—オープンしていかがでしたか?

プレミアムなコーヒーと、日常に溶け込ませるコーヒーを半々くらいに置いて、両方同じくらい購入していただいていますし、売り上げもずっと変わらず、ずっと良いです。自分の理想の形になってきていると思います。

僕が目指してるブランドは、地域密着プラス、非日常。飲食あがりなこともあって、「飲食=非日常」だと思っているんですよ。だから日常に溶け込ませるスペシャルティコーヒーと、世界レベルな非日常のコーヒーが気軽に飲めることの両立をすごく大事にしています。

 

 

—素晴らしいです。良い状態でお店を続ける上で大切にしていることはありますか?

僕の座右の銘は、会社のスローガンでもある「謙虚な心で感謝の気持ちを忘れずに」なんです。だんだんブランドも、個人のスキルも成長していくと、誰でも必ず奢る気持ちって出て来るんで、一回奢っちゃった時に、この言葉をぱしっとおこうかなって。それは僕も従業員に言うし、逆に従業員も僕に言ってくれるし、すごくいい関係ができているのかなって思います。

 

—LEAVES COFFEE ROASTERS(リーブスコーヒーロースターズ)の名前の由来は?

葉っぱが再生することを意味しています。葉は枯れて落ちて、また新しい葉がついてっていうのを繰り返している間に、木の幹はどんどん大きく太くなっていく。僕はそれを目指していて、新しい技術はどんどん取り入れながら、根本は変わらず、さらに成長させていきたいです。どんどんチャレンジしていって、それが合わなかったり、検証してだめだったりしたら、潔く捨てる。取り入れる力と捨てる力。温故知新をすごく大事にしています。

 

 

—素敵ですね。ところで、そういう発想はどこから?

降りてきます(笑)。

 

—え!急に?

はい。自分の言葉は常に探してはいますが、誰かの言葉を参考にすることはないです。みんなが笑顔になるにはどうしたらいいのかな、っていうところが主体になって、いろいろ言葉が生まれてくるのかな。

 

 

—これからコーヒーの世界で活躍したい人にアドバイスお願いします。

継続は力なりっていう言葉があるように、自分が信じていることだったらやり続けることが大事なんじゃないかなって思います。あとは、そこに愛がないとダメです。嫌々作ったものは美味しくないし。そこに愛があれば、絶対大丈夫だと思います。

 

夢と需要と供給のバランスっていう言葉をよく使うんですけど、売れるからって大量生産して売っても、全然好きじゃなかったら長続きしない。たとえちょっとしか製造できなくて、買いたいものはたまに買えるくらいかもしれないけど、最終的に生きて行けるお金が手元に残って、すごく大好きなことで愛のある仕事ができるのなら、それでいいんじゃないかな。それが良い人生だと思います。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

今、海外からも、競技会に出場するコーヒーのプロからも注目される東京の人気ロースタリーは、一見スタイリッシュでクールに見えますが、石井さんのお話を伺うと、それまでの苦労や努力、人情味溢れる下町気質の人柄や、コーヒーへの情熱が垣間見え、そのギャップがさらにこのお店の魅力になっているような気がします。

後半は、焙煎のことやこれから実現したいことなどを伺っています。お楽しみに。

撮影:田中淳子 Atsuko Tanaka

インタビュー:高綱草子 Kaya Takatsuna

プロフィール

 石井康雄 Yashuo ISHII

元プロボクサー。引退後は飲食業界で活躍した後、本格的にコーヒーの世界の扉を開いた異色のロースター。
東京・蔵前にあるロースタリーは、焙煎に集中したいとの理由から週3日しか開かない。
トップレベルのバリスタやバーテンダーとのコラボレーションも多く、常にさらなる高みを目指す。
趣味は、 1950年代にハンドメイドで作られたアメリカとフランスの眼鏡の収集

【店舗情報】

LEAVES COFFEE ROASTERS(リーブスコーヒーロースターズ) 住所:東京都墨田区本所1丁目8−8
電話番号:03-5637-8718
営業時間:10:00 - 17:00
定休日:火曜日から金曜日(土・日・月のみ営業)
https://leavescoffee.jp/


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