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エアロプレス世界チャンピオン 佐々木修一インタビュー『常にトップクラスのコーヒーに触れていたい』Interview: Shuichi Sasaki Barista at PASSAGE COFFEE

幸せな日常を彩ってくれるのは、一杯のコーヒーとワクワクする気持ち。コーヒーカルチャーに新しい風を吹かせる素敵な人たちにお会いするインタビュー第2回目は、 PASSAGE COFFEE(パッセージコーヒー)」のオーナー兼バリスタ、佐々木修一 さんです。

PASSAGE COFFEE は、2017年3月にJR田町駅から徒歩5-6分ほどの桜田通り沿いにオープンした白い壁や木のインテリアが印象的なコーヒーショップ。“通過点”や“道のり”を意味する店名“PASSAGE”には、 それぞれの日常の通過点で、当たり前のようにスペシャルティコーヒーを飲んで欲しいという思いが込められています。

佐々木さんの一杯のコーヒーは、凛としてクリアで美しく、そしてフルーティ。

前回インタビューした吉田一毅さんの人生を変えたエスプレッソを淹れたバリスタでもある佐々木さん。

ひとりの青年の人生を変えたコーヒーは、一体どのようにして生まれたのでしょうか 。

インタビューでは、佐々木さんの平常心の奥に隠された熱い想い、2014年に世界チャンピオンになった時のことや、コーヒーに対する考え方などを伺いました。

—PASSAGE COFFEEをオープンして1年経ちましたが、いかがですか?

ここにお店をオープンしてよかったと心から実感しています。慶應義塾大学が近いですが、近所の企業で働いていらっしゃるビジネスマンの常連さんも多いのが良いですね。開店した当初から来てくださっているお客様で、最初全くコーヒーに詳しくなかったのに、今は豆の種類や農園の名前でコーヒーを選んでくださるのを見ると、自分がコーヒーショップを持って伝えたかったことが少しずつ実現できている気はしています。

—この1年で、一番嬉しかった出来事は?

うちのバリスタの福島が、コーヒーの味の見極めと時間を競う大会「WATARU CUP TASTERS CHAMPIONSHIP2017」で優勝したことです。前の職場Paul Bassett (ポールバセット)にいた頃から一番近くで働いているので、自分のことのように嬉しかったですね。

—今までコーヒーに携わってきたなかで、既存の価値観を大きく変えられた出来事はありましたか?

知識、経営、そして味について、価値観を大きく変えられ自分が成長できた経験は3段階あります。最初の知識は、スターバックスコーヒーでのアルバイト初日に座学を受けた時。それまでコーヒーは1種類しかないと思っていたので、見た目が一緒なのに中身がぜんぜん違うことがとにかく凄い衝撃でした。次は、就職先のドトールコーヒーで学んだ経営面。コーヒーショップをどのように経営していくかについて別の衝撃を受けました。最後はPaul Bassettで知った、エスプレッソの味です。今まで飲んでいたのとは全然違う味で、しかも僕の好みだったことが驚きでした。それまでコーヒー専門店で働いたことがなく、僕の情報源や教科書は全て本だったのですが、そこに書かれていることを完全に無視してるのがPaul Bassettでした。

—今まで出会ったなかで最も影響された人は?

やっぱりPaul Bassett時代の大先輩、キヨさん(鈴木清和 、GLITCH COFFEE & ROASTERSオーナーバリスタ)でしょうね。コーヒーマンとしての生き方や情熱を教えてくれました。もともと熱意は結構あるつもりだったんですけど、まだまだ足りなかったですね。そこから凄く頑張って、情熱が増えました(笑)。

—佐々木さんは2014年エアロプレス世界大会でチャンピオンになられましたが、チャンピオンになるってどんな気持ちですか?

チャンピオンになった時は嬉しかったですね。シンプルに自分が美味しいと思うコーヒーをただ信じてやって来て、それがコーヒー界を牽引する人達に認めてもらえて勝ったことが自信になりました。

—エアロプレスの魅力とは?

僕がエアロプレスで味を作るときは、凄くクリアで質感は滑らかなリッチテイストに仕上げます。エアロプレスは空気圧をかけて抽出するものなので、お湯の温度を下げられるから重さを消すことができるし、より幅広い味が作れるところが魅力だと思います。あとは簡単に持ち運びできることじゃないですか(笑)。

—コーヒーの世界に関わって12年、コーヒーから得たものは?

やっぱり生活の豊かさじゃないですかね。朝来て飲んだり、昼に飲んだり、コーヒーが本来持っている力からものすごい活力をもらっています。

—佐々木さんが考える美味しいコーヒーとは?

液体がクリアであることや後味が心地良いなどもあるのですが、今までに感じたことの無い新しい印象のコーヒーに出会うととても興味が沸きます。

—これから目指すところはどこですか?

常にトップクラスのコーヒーに触れていたいと思います。それにもっと多くの人にコーヒーの新しい価値を知ってもらいたいから、クオリティが維持できるスピードで拡大はしていきたい。あと特に今は焙煎の技術を無限大に向上させたいと思っています。毎日が通過点でしかないです。

—世界の頂点に立った今も、さらに高みを目指すのはなぜですか?

より美味しいコーヒーを提供していきたいからです。今お客様にお出しているのは僕が一番美味しいと思っているコーヒーですが、今よりさらに美味しいコーヒーを提供していきたいんです。

—そのためにはどうしたらいいのでしょうか。

日々の積み重ねしかないと思います。コーヒーを淹れることと飲むこと、それを繰り返しやり続けるだけです。あとは世界の動きには常にアンテナを張っています。自分だけで考えていてもちょっとずつしか成長しないけど、いろんな情報が入ってくるとヒントをもらえます。

—これからコーヒーの世界を目指したい人にアドバイスをお願いします。

もしも養成学校に通っているなら、その立派な環境をちゃんと利用するべきだと思います。普通は現場に入って成長していくものですけど、教わって成長できるなんてすごい貴重な機会だと思うんです。あとは、夢を見ているだけでは何も達成できないと思う。高いゴールを設定して将来そこにいる自分を想定したら、逆算して今自分が何をするべきか、そういう見方ができるようになるといいですね。

—最後に、佐々木さんにとって「美しい」と思うことを教えてください。

今日の青い空じゃないですか(笑)。自然が一番ですよね。沖縄の海も素晴らしかった。エメラルドグリーンて本当なんだなって思いました。誰が手を加えたわけでもない、自然と生まれたものは芸術だと思うし美しいです。普段から自然体であんまり着飾ってないようなナチュラルなことに惹かれますね。

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自分の信じる美味しいコーヒーのために日々ひたむきにコーヒーと向き合う、まさに職人のあるべき姿を垣間見た素敵なインタビューとなりました。私には計り知れない繊細なレベルで競い合うトップクラスのコーヒーも今はまだ通過点という佐々木さん。3年後、5年後のPASSAGE COFFEEがどう進化していくのかも楽しみで仕方ないです。ちなみに、吉田さんの人生を変えたエスプレッソを淹れたこと、本人は全く憶えていませんでした。

 

※エアロプレス大会とは、共通の課題豆と器具を使って各競技者が独自に考案したレシピで8分以内に作った一杯を競い合うもの。3人のジャッジがテイスティングして、スリーツーワンで一斉に美味しかった方を指して2つ以上指されたカップが勝ちというトーナメント方式の世界共通ルールのもとで行われる。日本各地で予選があり、本大会で優勝した一人が日本代表として世界大会へ出場する権利を得る。2018年の国内決勝は9月29日、世界大会は11月にシドニーで開催される。

 

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka

プロフィール

佐々木修一 Shuichi Sasaki

福岡県久留米市出身。学生時代にスターバックスでアルバイトを始め、卒業後はドトールコーヒーへ就職。
独学や専門学校での勉強を経て、Paul Bassettへ転職したのち、2014年にWorld Aeropress Championship で日本人初の世界チャンピオンに輝く。
独立後の2017年3月、東京・三田に「PASSAGE COFFEE」をオープン。様々な大会の審査員やセミナーを務めるほか、現在も焙煎の大会などにも出場しコーヒー全般に関する技術を磨く。趣味は音楽鑑賞

【店舗情報】

PASSAGE COFFEE (パッセージコーヒー) 住所:東京都港区芝5-14-16 大正堂ビル1F
アクセス:JR田町駅徒歩5分/都営三田線三田駅徒歩4分
営業時間:平日 7:30 - 19:00 土日祝日 9:00 - 19:00
定休日:不定休
http://passagecoffee.com/

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