• homeHOME /
  • WHO LOVE COFFEE /
  • 吉田一毅インタビュー『純粋な情熱や好奇心をいつまでも大切にしていきたい』Interview: Kazuki Yoshida, Barista at Life Size Cribe

吉田一毅インタビュー『純粋な情熱や好奇心をいつまでも大切にしていきたい』Interview: Kazuki Yoshida, Barista at Life Size Cribe

幸せな日常を彩ってくれるのは、一杯のコーヒーとワクワクする気持ち。これからインタビューのコーナーでは、コーヒーカルチャーに新しい風を吹かせる素敵な人たちにお会いします。記念すべき第1回目インタビューは、「Life Size Cribe(ライフサイズクライブ)」バリスタ/焙煎士 吉田一毅さんです。

国分寺駅北口すぐの路地を入って右に曲がると見えてくるのは、筆記体で伸びやかに描かれた“Cribe”の看板。木製にメタルが施されたドアを開くまで、中に何が潜んでいるかわからない、まるで秘密基地のような場所がそこにはありました。「Life Size Cribe(ライフサイズクライブ)」、吉田一毅さんのコーヒーショップです。

 

 

吉田さんがコーヒーの世界にのめり込んだのは、社会人になって数年経った頃、プライベートで飲みに行ったエスプレッソに衝撃を受けたことがきっかけです。初めて砂糖なしで飲んだエスプレッソは「ダークチョコレートのような甘さを感じて、あまりの衝撃に鳥肌が止まらなくなった」と当時を振り返ります。その後、会社を辞めてそのコーヒーショップに転職してしまうのですから、吉田さんの人生を変えた一杯と言っても過言ではないでしょう。

2015年3月に「Life Size Cribe」をオープンして以来、国分寺の住人になくてはならない存在になったお店。この小さな基地(Crib)で吉田さんが淹れる一杯のコーヒーを目指して、海外旅行者からプロのバリスタ、そして近所の高齢者まで様々な日常を暮らす人たちが、 オープンの朝9時から夜9時までひっきりなしに訪れます。コーヒーと共に生きる吉田さんが今、思うことを伺いました。

 

 

—吉田さんにとって、美味しいコーヒーとはどんなコーヒーですか?

究極の美味しいコーヒーとは、体に入れた時に体が喜んでいるかどうかで決まるというのが僕の持論です。極度に苦いコーヒーを飲んだら胸焼けを起こすし、劣化した酸を感じるとリンパがビリっとする。美味しくないものは体がストレスを感じます。このシェフが言うから美味しいっていう固定概念や感覚的なものより、僕が気にしているのは、体がどう反応するかです。

 

 

—具体的に言いますと?

特に気にしているのは温度です。冷たすぎても熱すぎても 体にストレスをかけてしまうので、「温かい」と感じる体温に近い温度帯を心がけてます。以前、人は体温からプラスマイナス30℃くらいの温度帯のものを心地いいと感じて摂取するって言うのを読んだことがあるのですが、それをベースに考えるなら、体温が36度の人にコーヒーを出すなら66度くらいですよね。でもコーヒーの香りも楽しんでもらえるように、体温より少し高い70度くらいでお客様に提供します。そのくらいが、 香りもあって口当たりも優しいですよ。

 

 

—吉田さんがコーヒーの世界に入って約10年経ちますが、コーヒーを通して得たものは何ですか?

大きく分けて3つあります。まずはコーヒーに関する技術。僕はPaul Bassett (ポールバセット)にいたのですが、当時の日本では世界チャンピオンの技術やコーヒーはそこでしか学べませんでした。あの技術を体得して、そこから自分の形に色々変えられたのは自信になりましたね。次に人間的な成長。こう見えても昔はなんでも疑ったり、自分にとってプラスかマイナスかを最初に考えたりするところがあったけど、今はすぐ自分をオープンにできるし、人の魅力を見つけられるようになりました。最後は、言葉で伝えるという技術です。昔はバリスタや焙煎士は職人=匠の技だけ追求すればいいと思ってましたが、それだけじゃダメで、自分が作ったものを言葉で伝えることの大切さを学びました。

 

 

ー職人にも言葉が必要だと思うきっかけとなったのは?

Paul Bassettの時に同僚だった大槻祐二(THE LOCALヘッドバリスタ)との出会いが大きかったですね。あいつは人の懐に入るのが凄くうまいんですよ。お客様と凄く楽しそうに喋ったり、上手にエスコートしたりしているのが衝撃でした。それ以来、お客様との限られた時間の中で、端的に魅力的な言葉でどう伝えられるか、どうしたら「この人のオススメを買いたい」と思ってもらえるかを考えるようになりました。「僕のオススメは・・・」っていう伝え方はお客様にも届くし、ただコーヒーを提供するだけじゃない特別感が生まれるんです。つまり職人は、サービスマンでもあるということです。

 

 

—他にも、既存の価値観を大きく変えられた出来事や出会いはありましたか?

ONIBUS COFFEE坂尾篤史さんとお話した時に、「僕も負けないように頑張ります」って言ったら、「いやいや、お前別に負けてないし、誰とも争ってねぇじゃん」て言われてハッとしました。 自分はそれまでダンスやスポーツを長年やってきたので、勝負事がエネルギーを発散する場所だったんだと気付かされて。店を始めたのはやりたいことを実現したいという純粋な気持ちからの行動であって、もう勝ち負けなんて存在しないんですよね。僕はどこかが根本的にズレてると思いましたし、お店をここでやる上でも、その言葉はとても価値のある大きなものでした。

 

 

—これからコーヒーの世界で活躍したい人にアドバイスするなら?

“僕らがまだ見たことのないコーヒーを表現してみてください”と言いたいです。「今こんなコーヒーを表現する子がいるんだ」っていうのを、上下関係なく同じ目線で見たいし、僕もエッセンスをもらいたい。それと、自分自身が楽しくなければこの仕事は続かないです。僕が始めた頃は、スペシャルティコーヒーがまだ全然知られていなくて、「これを伝えれば何かが起きる」という見えない景色への期待や興奮がありました。今は技術も情報もどこからでも簡単に手に入るけど、それだからこその危うさもあります。ファッショナブルでカッコいいという部分から入るのはいいけど、離職率が高いのも現実。バリスタになって、焙煎して、お店を出すって一つのゴールのように見えるけど、本当にそれがゴールでしょうか。なぜバリスタを選んだのか、なぜ仕事にしたのか、なぜそこでお店をやるのか、なぜ自分が淹れるのか、をしっかり考える必要があると思います。

 

 

—吉田さんオススメのコーヒーと音楽のペアリングは?

1曲目は音楽好きの僕のルーツでもある90年代のヒップホップ、Musiq Soulchild の「Just Friends」2曲目は常にインスパイアされているトラックメーカー、Nujabes の「Reflection Eternal」。 もう一曲は雰囲気を変えて、Take6の「biggest part of me」。これらの曲を聴きながら、気だるそうにコーヒー飲んでいる時が一番ニュートラル。そんな自分が好き(笑)。これが僕のずっと変わらないコーヒーの飲み方です。コーヒーの味を探したりするのではなくて、何も考えずにひたすら茶色い液体見ながら、体にコーヒーが流れていくのをただ感じるというか。コーヒーの種類は何でもありだけど、強いて言えばケニア。自分が淹れるのはライトでフルーティだけど、ちょっと濃くした感じかなぁ。

 

 

—吉田さんにとって「美しいこと」ってなんですか?

日常です。 闘うことにも美しさはあるけど、僕は今、ナチュラルでニュートラルなものに美しさを感じます。芸術作品など、誰かに見せるために意図的に作ったものではなく、ただいつもの目的地に歩いてるだけのような、当たり前の光景が美しいです。 ちゃんと自分自身の背丈とやりたいサイズ感を考えて、とにかくやり続けることが今の僕のやるべきことだなって最近思っているからかもしれないですけど。

 

 

—まさにLife Size Cribe!これから吉田さんがどう変化していくのか楽しみです。

もちろんコーヒーは自分の中にずっと存在するでしょうけど、一生コーヒーの仕事を続けているかはわかりません。もっと飲みやすいコーヒーカップが必要だと思ったら陶芸家になって山に篭るかもしれないし、自ら地域を変える必要があると思ったら政治家に立候補するかもしれない。純粋に自分の中に生まれる情熱や好奇心をいつまでも大切にしていきたいですね。

 

ちなみに、吉田さんの人生を変えた衝撃のエスプレッソを淹れたのは、当時Paul Bassettでバリスタをしていた佐々木修一さん(現PASSAGE COFFEEオーナー)です。佐々木さんはPASSAGE COFFEEで、吉田さんはLife Size Cribeで第1回から川越コーヒーフェスティバルに参加して下さっています!人の縁と巡り合わせって素敵だなぁと実感したインタビューになりました。

 

※Paul Bassett(ポール バセット)とは、最年少で世界チャンピオンになった伝説のバリスタのこと。「豆」「焙煎」「バリスタ」に徹底的にこだわり、世界中から厳選された新鮮なコーヒー豆だけを使用した世界レベルのエスプレッソコーヒーとスウィーツを提供するカフェとして話題。2006年に日本1号店「Paul Bassett」をオープン。当時そこで経験を積んだバリスタの多くが今のコーヒーカルチャーを牽引している。現在は新宿野村ビルと渋谷ヒカリエに店舗を構える。

 

 

Interview & Text: Kaya Takatsuna / Photo: Atsuko Tanaka

プロフィール

吉田一毅 Kazuki Yoshida  

埼玉県幸手市出身。学生時代はバスケットボールとダンスに没頭する。大学卒業後は大手コーヒー企業に就職し半年で店長に。
その後、Paul Bassettでは渋谷ヒカリエ店オープニングスタッフとして配属され、バリスタとしての技術と経験を培う。独立後の2015年3月、国分寺に念願のコーヒーショップ「Life Size Cribe」をオープン。
2017年11月にCRAZY BARISTA Latte Art Edition open Niigataでラテアートチャンピオンに輝く。その後も様々な国内大会に上位入賞するほか、世界大会にも出場。趣味はピストバイクとカメラ。

【店舗情報】

Life Size Cribe (ライフサイズクライブ) 住所:東京都国分寺市本町3丁目5−5
電話番号: 090-9150-9111
営業時間:月火木:9:00-21:00 金土日祝:11:00-21:00
定休日:水曜日、不定休
https://www.instagram.com/lifesizecribe/

WHO LOVE COFFEE BACK NUMBER

NEW ARTICLE

Page TopPage Top