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コーヒーの焙煎技術を競う世界大会で2018年、準優勝に輝いた、仲村良行インタビュー。前編「僕は情熱を持っている人と関わりたいし、そういう人が増えれば世界は面白くなる」Interview: Yoshiyuki NAKAMURA vol.1, Mame Polepole

幸せな日常を彩ってくれるのは、一杯のコーヒーとワクワクする気持ち。コーヒーカルチャーに新しい風を吹かせる素敵な人たちにお会いするインタビュー第5回目は、「豆ポレポレ」店主の仲村良行さんです。

仲村さんは、沖縄県沖縄市の「豆ポレポレ」のオーナーで焙煎士。焙煎技術を競い合う「World Coffee Roasting Championship(ワールドロースティングチャンピオンシップ) 2018」 に日本代表として出場し準優勝に輝きました。

数々のハードルを超えて沖縄から世界へ挑んだ仲村さん。コーヒーにどのような思いで向き合っているのでしょうか。インタビューは前編・後編の2回に渡ってお届けします。前編は、幼い頃の出来事から、焙煎に出会って勉強を始めた頃までを中心に。常に考える習慣を身につけた方法や、人生を変えた大きな出逢いなどを素敵なお話を伺いました。

—小さい頃はどんな感じの子供でしたか? 

普通を目指してる普通の人で、普通が一番と思っていました。小学生で致命的なんですけど、あんまり物事を深く考えず、ちょっと物覚えが悪く、人の名前を覚えられない子で。だから、目立つようなことは絶対したくないし、変なことするのも嫌だし、とにかく普通を目指してる子でしたね。

 

—当時、夢中になったものはありますか?

 ファミリーコンピューターくらい。小学校1年の頃にブームが来て、僕の家は買ってもらえなかったので、友達のお家に行って、やっている子の様子を後ろで観てました。 いとこのお兄ちゃんとちょっと遠出して、学校では禁止されていたゲームセンターに入って、お金がないからそこでも後ろで観てました。ゲームのカセットの入っているパッケージをみながら、色々と想像を膨らませていましたね。

 

—コーヒーに入る前に夢中になったものは?

僕が大学生の時にブームだったビリヤードに夢中になりました。ビリヤードをやりに、タイ、カンボジア、ベトナム、ラオス、って周りました。どこもカフェにビリヤード台があって、飲み物さえ注文すれば長時間安く遊べるし、ビリヤードの球が日本よりちょっと小さいから、少しスキルが必要でレベルが高いんですよ。

—ビリヤードがきっかけで海外に行って、そこでコーヒーに出会ったんですね。

どのカフェに行っても、苦いコーヒーに練乳を入れて飲むベトナムコーヒーが必ずあって、その味にハマりました。それで、帰国してから沖縄のカフェで働き始めました。それからは独学です。

 

では、エスプレッソや抽出ではなく、焙煎に興味を持ったきっかけを教えてください。

コーヒーを勉強していく中で、「どうやら味の決め手は焙煎らしい」って思って。でも当時はヴェールに包まれた世界だったので、「焙煎てなんだろう」っていうのがきっかけで、 好奇心のままに手網焙煎からスタートしました。ところが、当時働いていたお店のマスターからもらった豆で焙煎したら、安くて品質の悪い豆をもらったせいか、最高にマズかったんです。焙煎てなんて難しいんだろうって思ったのも大きかったですね。でも元々はエスプレッソも好きで、「なぜこうやって抽出されるのか」ばかり考えていました。

—なんでも“なぜ?”って考えるんですね。

その時は、本当にコーヒーのことばっかり考えてました。エスプレッソの圧力とか抽出をずっと考えていた時に、僕が当時想像してたのは、空気鉄砲。あんな感じでコーヒーの粉入れて、お湯入れて押したらそのままエスプレッソできるよね、「こんなのあったらいいな」って思っていたんです。それがエアロプレスですよね。だから、本当にエアロプレスが出た時は、「昔、こんなの考えてたな」って思い出しました。

 

—じゃあその時に、もしエアロプレスを仲村さんが作って入れば、今頃発明家でしたね!

なってたかもしれない。でも、とにかく当時は考える癖をつけよう、全てコーヒーに関連づけようって思っていました。

 

—なぜそういう発想になったんですか?

自分が頭のいい子じゃないから。本当に頭のいい人って、すぐいろんなところに気がつくけど、自分の場合はずっと考えてないと何も閃かないなって思ったんです。だから頭の片隅にずっとコーヒーを置いておこうって決めて、何か見るたびに、そこにリンクするようにしていました。

 

—例えば?

たとえば、雨をみていてボツボツ降ってる、それを抽出に例えたらどうなるんだろうなぁとか。例えばステーキ焼いてる時にフライパンの表面からの伝導率とか、メイラード反応でカラメル化するとこういう反応があってとか、全てをコーヒーに変換して考えるようにしようって。当時はインターネットも普及してないから、妄想するしかなかった。小さい頃にゲームのパッケージ見て、「どういうゲームかな」って想像していた頃と一緒で、妄想する癖をつけてました。

—その後に、焙煎をやり続けていて、焙煎が上手くなったと実感した瞬間はありました?

それは、本当にここ最近、カップが取れるようになってからなんですよ。今まではひらめくたびにいろんなことを試したけど、味が取れてないから、終着点が見えず、ゴールがどこだかわかってなかった。

 

—味がわかるようになる方法は?

やり続けたからじゃないですか?あとは味を知ってる人と、どれが美味しくて、どれが美味しくないコーヒーかをシェアすること、それが一番の近道ですよね。僕は、「マツモトコーヒー」さんによく相談に行って、飲ませてもらいながらいろいろ親切に教えてもらいました。Qグレーダーも取りに行って、カッピングもそうですけど、ちょっとづつ引き出しを増やしていって、何が良くて何か悪いかがっていうのを結びつけて、ようやくですね。

 

—今までで一番の衝撃のコーヒー体験ってありますか?

最初にコーヒーにハマるきっかけになった、自分で焼いたマズイコーヒーの衝撃体験もありますけど、クオリティでいうと、最初に自分で焙煎したゲイシャのコーヒーは、本当にゲイシャの香りがして、今でもすごく覚えています。コスタリカのゲイシャでした。それまでゲイシャを買ったこともなかったのに、たまたま自分で焙煎したら美味しく焼けて、ゲイシャフレーバーがパーン!て強く出たんです。フルーティなコーヒーでもこのレベルがあるんだっていう体験でしたね。もう10年以上前ですけど。

 

—人生を変えてくれた人との出会いはいつで、それは誰ですか?

うーん、嫁ですかね。何するにしても思い切り背中を押してくれたので、そこは凄くありがたいですね。やりたいって言ったら、とりあえずなんでもやらしてくれます。自分の中にちょっとネガティブな気持ちもある、でもやりたいなっていう時に相談すると、全力で応援してくれます。

 

—うわぁ奥様、素敵すぎます。

例えば、台湾の焙煎のセミナーに呼ばれた時も、言葉が通じないからめちゃくちゃ心細いんですよ、人見知りだし。でも、素晴らしい研究機関のメンバーが来るし、いい経験になるとわかっていて憧れもある。僕、子供4人いるんですけど、そういう時に、「行ってきな!子供はしばらくの間、一人で見るから大丈夫!」って。僕がいない時には焙煎もしてくれますし、やっぱり彼女がいないと成り立ってないです。縁の下の力持ちですね。世界大会に向けても、毎月いろんなところに練習しに行ってお店にいない状態しているのに背中を押してくれる。嫁がいなかったらそういう挑戦もできなかったなって思います。もちろんスタッフもそうですし、僕は恵まれていますね。

—座右の銘はありますか?

きつい汚いとかを世間では3Kっていうけど、うちの家族の3Kは、感謝、謙虚、健康。その3つは忘れがちだけど、大事だなって。

 

—コーヒーマンとして大切なことは?

コーヒーに関わらず、広くどの職業でも、僕は情熱を持っている人と関わりたいですね。気持ちがないと伸びないし、伝えられないし。気持ちがある人と関わりたいし、そういう人が増えれば面白い世界になると思ってます。もちろんスマートな人たちもいますけど、ちょっと泥臭いけど、リスクを冒してでもやるよっていう気持ちがあることですね。

 

—では焙煎士として美味しいコーヒーを作れる資質ってあります?

人に習うんだったら素直な人が向いてると思うし、資質で言ったら、気遣いできる人ですね。

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笑顔が素敵で朗らかで優しく、そして科学的で論理的。コーヒーの話になると、どこまでも止まらずにお話してくださいました。「なぜ?」にとことん向き合って追求するという姿勢は、どの分野もトップを極めた人なら同じだと改めて感じました。好奇心は全ての源ですね。

また、奥様の縁の下の力持ちのお話、深く心に響きました。

次回インタビュー後半は、先日行われた今年の世界大会についてや、これからのコーヒー界に思うことなどをお聞きしました。そちらもお楽しみに!

豆ポレポレさんは、沖縄からはるばる川越コーヒーフェスティバルにやって来ます!

このチャンスをお見逃しなきように!!

 

インタビュー& 撮影:高綱草子 Kaya Takatsuna

プロフィール

仲村良行 Yoshiyuki NAKAMURA 

沖縄県沖縄市出身。「豆ポレポレ」のオーナーであり焙煎士。
大学時代にハマったビリヤードでアジア各国を周った際に飲んだベトナムコーヒーがきっかけでコーヒーに興味を持つ。
独学を経て、2010年12月22日に「豆ポレポレ」をオープン。国際資格Qグレーダーを取得して、さらに焙煎技術を深める。
2017年ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップで優勝し、日本代表として2019年1月にイタリア・リミニで行われた「ワールド コーヒー ロースティング チャンピオンシップ2018」(WCRC)に出場。準優勝に輝いた。

【イベント情報 】

川越コーヒーフェスティバル

会場:蓮馨寺
https://kawagoecoffee.com/

開催時間:11月30日(土)・12月1日(日)10時から16時半

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