「老い」と観客をシビアに向き合わせる芸術的秀作! 全てが静かに素晴らしすぎるオスカー5部門ノミネート映画「愛、アムール/ Amour」

オスカー授賞式当日の2月24日に、86歳の誕生日を迎える女優、エマニュエル・リヴァ/ Emmanuelle Rivaはアカデミー主演女優賞にノミネートされています。「演じる」ことで使うエネルギーって、肉体にも精神にも相当の負担なのに、85歳でこんなにヘビーな役を完璧に演じている彼女はいったいどうなっているんでしょう!?? ミヒャエル•ハネケ監督「愛、アムール/ Amour」は作品賞、監督賞、主演女優賞、外国映画賞、オリジナル脚本賞の5部門にノミネートされている秀作。老老介護という今の社会のテーマを抉り取り、芸術レベルの域で完成させている映画は世界初ではないでしょうか?カンヌで最高賞を穫ったこの作品が観るものに伝えることは?

正直、ハネケ監督の作品は苦手な私。なぜなら観るたびに苦しくなって、切羽詰まって逃げ場がなくなるからです。観るまでに相当の覚悟が必要なのです。今回もドキュメンタリーではなく、しっかり「映画作品」として芸術的完成度を保ちながらも、超リアルに観客の胸を締め付ける作品にしているのは、監督、役者、スタッフ、そして脚本。ハネケ作品は常に映画作品に必要な要素全てが、独自のしなやかで強い一本で繋がっているのです。例えば今作、元音楽教師の夫婦の老後という設定でありながら、映画の大事なファクターであるサウンドトラックがまったくありません。エンドロールまで無音。この徹底っぷりは、音と共に生きてきた夫婦の生命の終わりを暗喩しているかのようで、サントラのない映画作品でここまで音と作品と命のつながりを逆に強く感じたのも初めての体験でした。
印象的なのは度々登場する「待つ」シーン。演奏会場でピアニストの登場を「待つ」老若男女の観客の姿を捉えた様子と、そのとき「待たせる」側だったピアニストが、車椅子の老婆を「待つ」側として部屋で手持ち無沙汰にしている様子。これらをロングテイクで捉えるカメラから伝わってくるものは、まるで人生という箱に閉じ込められ、老いることを順番に「待つ」私たちの鏡のようでぞくっとしました。今は受け身側の我々も、次はその人生の主役になるんだということをまるで逆さまの発想で伝えられているようで、いつか絶対訪れる「老いた」という事実を静かに突きつけられるのです。

夫役は「男と女」のジャン•ルイ•トランティニアン/ Jean-Louis Trintingnant。いいおじいちゃんになりました。女優側ばかりが取り上げられる今作ですが、彼の演技も素晴らしい!相手の「受け」が良くなかったら、彼女の演技に対する評価も変わってきたことでしょうし、ジャン•ルイ•トランティニアンあっての主演女優賞ノミネート。彼女にはオスカー是非穫ってほしいけど、彼女の演技は賞レースがまるでちっぽけなものに感じるほど崇高で美しい芸術の域に達しています。演技だとは思えないほどリアル。映画製作の現場で活躍するのってかなり体力いるので、歳とれば取るほど、ラクな役しかしない大俳優が多いけど(そもそも85歳じゃ引退してるし、大俳優は無茶して生きた人が多いからすでに天国ですよね)、そう考えたら彼女は85歳とは思えない若さです。世界国宝級の彼女の演技は必見!また老いを笑いに変えたり、希望をはっきり示してくれる作品が多い中、逃げ場を与えず直面させてくれる作品によって、今いる社会と自分の将来のリアルな姿、愛とは?平和とは?という大きなテーマについて深く考える観賞後になりました。

<<ストーリー>>パリに住む元音楽教師の80歳の老夫婦に突然襲った妻の半身不随という悲劇。病院や施設での生活を拒む妻の願いを受け容れ、夫は自宅介護を始めるが、、、。
日本公開は2013年3月9日より
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