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わが心のボルチモア ボルチモア編 vol.16

2012.09.30

「わが心のボルチモア」という映画がありました。東欧移民としてボルチモアに来た男が、アメリカンドリームに向かって突き進んだ時代に築き上げた家族とその変遷を、年老いて全てを失いつつある中で振り返るストーリー。日本で観ていた頃は、こんな遠い国があるんだなぁと漠然と想像していただけだったけれど、実際にこの地を訪れ古い歴史の重層感と今ここで生きている人々に触れて、この映画をふと思い出し、身につまされる思いがしました。

歴史の厚みは、教会の数の多さからも感じました。空洞化と治安の悪化は依然深刻な街です。ダウンタウンの教会のまわりにはアフリカ系アメリカ人のホームレスが集い、そこを通るたびにタバコやお金もっていないか聞かれます。一番驚いたのは、ダウンタウンには日本人どころかアジア人がほとんどいないこと。これはロサンゼルスではありえません。郊外に韓国人街や中国人街らしきエリアを見つけましたが、ヨーロッパ移民で始まった古いアメリカの土地。もともとアジア人が住み着いた街ではないのかもしれません。西海岸に比べ、メキシコ人の数も圧倒的に少なかった。

そして気になってしまうのが劇場。以前は栄えて人々が集まっていたのであろうダウンタウンの一角は、ゴーストタウンのように静まり返っていました。その中心にあったのが閉鎖された劇場。もう何年も前にクローズされたようですが、建物自体はとても豪華。取り壊される事もなくそのまま残された大劇場を見ていると、切なさがこみ上げてきます。ノスタルジックな心境になるボルチモアの一面です。

オーガニック・ナチュラルコンベンションで訪れた地でローカル的ライフスタイルに触れ、LAとの違いをたくさん発見し改めてアメリカの広さを感じた今回。経済が縮小し、人口が減り続け空洞化が深刻な街ならではのアイディアと工夫で、ローカルを生かした持続可能な生活を探っているという印象を受けました。最後に訪れたカフェのミッションにもあったように、都心の中にローカルを全部持ってくるといった、ボルチモアの歴史の上だからこそ実現できる大きなメリットに住人たちが気付き始めた気がします。人口が減っていく地域のローカル&オーガニックライフスタイルの一例として、ボルチモアの今後にも注目していきたいと思います。

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